毛髪研究 最前線ヘアカラーに関する研究成果

「ダメージレス」・「きれいな発色」・「使いやすさ」を併せ持った弱酸性ヘアカラーに関する研究成果が得られましたので、報告いたします。

弱酸性ヘアカラーとは

一般的なヘアカラーであるアルカリヘアカラーには、1剤に酸化染料(色素)・アルカリ剤・界面活性剤、2剤に過酸化水素が配合されています。これらの成分がお互いに働き合い、酸化染料の浸透・発色・ブリーチといった3つの作用が髪に対して同時に発生します。

図1 アルカリヘアカラーの染毛メカニズム

アルカリヘアカラーでは、髪を明るくしながら色を表現することができますが、ブリーチ作用、アルカリ剤自身による髪のダメージが発生してしまいます。一方、弱酸性ヘアカラーには、1剤に酸化染料(色素)・界面活性剤、2剤に過酸化水素が配合されており、髪に対する作用は酸化染料の浸透・発色のみとなります。

図2 弱酸性ヘアカラーの場合

アルカリ剤が無いことにより、ブリーチ作用の発生が無いので、髪を明るくすることができない反面、髪のダメージはありません。また、ヘアカラー特有のツンとした臭いもありません。
ダメージレスカラーを実現するために、デミ コスメティクスは1986年に日本初となる弱酸性ヘアカラー「デミカラー」を発売いたしました。以後、時代に応じた弱酸性ヘアカラーを発売し、展開をしてきました。

弱酸性ヘアカラーの問題点とその解決について

髪へのダメージが無い弱酸性ヘアカラーですが、従来はいくつかの問題点がありました。デミ コスメティクスは長年に渡る弱酸性ヘアカラーの研究成果を活かして、問題点を解決しています。

【問題点1】 色味が濁りやすく、鮮やかさを表現しにくい

酸性領域では、酸化染料の発色時に色味が濁りやすい傾向があります。さらに、髪のダメージ状態によっては色味が濃く発色し、色の沈み込みにつながってしまいます。デミ コスメティクスはこういった問題に対して2つの面からアプローチを行い、ダメージレスときれいな発色の両立を実現しました。

構成する色味の検討

ヘアカラーの色味は複数の色素による色の重なりでつくられています。構成しているそれぞれの色の濁りが強いと、仕上がりの色味にも濁りが生じます。そこで、従来よりも鮮やかな色味を重ねて色味を調整することにより色の濁りを解消しました。

図3

2剤の過酸化水素濃度の設定

酸性領域では、過酸化水素濃度により、色の鮮やかさが変化します。2剤の過酸化水素濃度を5%に設定することにより、より鮮やかな色味の表現が可能となりました。なお、酸性領域においては過酸化水素濃度を5%としても髪のダメージ度合いは変化しません。

図4 過酸化水素濃度と色の鮮やかさの関係

【問題点2】 施術には高い技術を要する

従来、アルカリヘアカラーと弱酸性ヘアカラーを組み合わせて施術する際には、新生部と既染部の境目をうまくなじませるためには、塗り分けにコツが必要で、施術には高い技術を要していました。これは、アルカリヘアカラーと弱酸性ヘアカラーという性格の異なる2つの薬剤の相互作用があったためです。

1:新生部側にアルカリヘアカラーを塗布 2:既染部側に弱酸性ヘアカラーを塗布

デミ コスメティクスは、弱酸性ヘアカラーの適切な緩衝力(pHを保つ力)設定、過酸化水素濃度設定により、アルカリヘアカラーと弱酸性ヘアカラーの2つの薬剤の相互作用を少なくしました。その結果、薬剤の使い勝手が向上しました。また、塗り分けを必要としない新しい施術方法(重ね塗り法)の開発を行い、弱酸性ヘアカラーをより使いやすくしています。

図6:新生部にアルカリヘアカラーを塗布、新生部の明度が上がったら、髪全体に弱酸性ヘアカラーを塗布

製品への応用について

本研究で得られた知見・技術は2013年2月発売の「アソート アリア エトレ」に応用されています。「アソート アリア エトレ」を用いた、ダメージレス・きれい・使いやすいヘアカラーの提案により、サロンカラーの付加価値向上のお手伝いをします。